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おやま内科クリニック

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薀蓄、貧血!

「貧血」というと一般の方は「血が少ない」または「鉄分が足りない」などと思い込みやすく、鉄剤をはじめ、まったく不足していない鉄分補給を延々とおこなっている方も少なくありません。貧血の原因は鉄欠乏以外にも種々存在し、しっかりと原因を見極めて治療および生活習慣の改善をしていく必要があります。
第1の原因は出血です。急激に出血した場合は、症状も強く、血圧低下(ショック状態)や意識障害および多臓器不全などを呈しますが、痔からの出血や重なる女性の生理出血(子宮筋腫など)および消化管などからの比較的ゆっくりまたは少しずつ繰り返す出血は「慣れ」が生じ、進行するまで症状に出ることは少なく、治療を開始するときは比較的重症となっていることもしばしば見られます。この原因に対する治療は、しっかりと出血部位を同定し治療することと、出血して体外に出た鉄分の不足を算定し補うことにあります。このとき、患者さんに流れている1個の赤血球は小さく変形しており、これは採血検査で容易に数値として判定できます。血液を流れている鉄分(血清鉄)と肝臓・脾臓に貯蔵されている鉄分(フェリチン)も決め手になります。はやまった輸血や過剰な補正は好ましくありません。偏食なども鉄分減少の原因となるのでバランスのとれた食生活はいうまでもありません。
第2の原因はビタミン欠乏にあります。ビタミンB12の欠乏による貧血ですが、これは胃からの内因子というビタミンB12を吸収する因子が欠乏するためにおこります。慢性の甲状腺疾患と合併し自己免疫疾患といわれていますが、原因不明の疾患で悪性貧血といいます(胃癌のことも多い)。症状は貧血症状に加えて足の感覚が鈍くなったり、しびれがでたりと神経症状がでることが多いようです。採血検査ではビタミンB12の減少もみられますが、まず特徴的なことは鉄欠乏性貧血とは逆に1個の赤血球が大きくなり、これが数値として出ることで疑います。
第3は溶血です。これは赤血球の寿命が短くなることと同じことです。溶血の程度が軽度だと骨髄が代償しているので貧血となりにくいのですが、高度となると貧血は進みます。症状は発熱、腰痛、黄疸、尿の色調変化(コーラのような尿がでる疾患もあります)などあります。
第4は血液を造る工場の病気である骨髄異形成症候群(MDS)再生不良性貧血および慢性白血病などがあります。MDSはゆっくり急性白血病へとすすむ可能性を持った病気であり、高齢者に多いという特徴があります。治療は貧血などの血球減少が進まないようにすることが主体となりますが、必要に応じて急性白血病に準じた化学療法もおこないます。高齢者の貧血は常にこの疾患を疑って検査をすすめます。骨髄の病気では貧血だけではなく白血球(抵抗力として働く血球群)数やその種類および血小板数(止血をおこなう血球)にも異常が及ぶことが多くこの観察も参考になります。その他、肝臓病、腎臓病、膠原病、感染および炎症などの二次性の貧血もあり、多彩な原因、機序があります。
たかが貧血などと放っておかずに大きな病気を抱えていることも少なくないので原因をはっきりとさせしっかりと検査と治療を行うことが先決です。